小森発:フランス・おやつ探訪

 

ご無沙汰しておりますが、皆様お元気でしょうか。

私たち家族は、昨年(2007年)、南フランスのニームという街に引越しをしました。パリと比べると暖かく、夏の日差しの強さはかなりのものですが、冬は冬でミストラルという強い北風が吹いて、パリ以上に寒く感じる日もあります。

今回はレシピはありませんが、ニームで見つけた南らしい素朴なおやつをいろいろご紹介します。

 

第6回 ニームで見つけたおやつ(その1) Goûter nîmois T

 

まず始めは、ニームの中心街にある市場の中のパン屋さんで見つけた、ZEZETTE DE SETE ゼゼット・ド・セーという焼き菓子です。お店の人に尋ねたところ、 “バニラ風味のサブレ生地に砂糖をまぶして焼いたもの“とのこと。食べてみると、バニラの風味はそれほどなく、また、砂糖をまぶしてあるのかもよくわからずで、甘さもバターの風味も控えめでしたが、なんだか懐かしい味わいがありました。子供のころに食べていたクッキーが、バターが少なめで粉の配合が多い、こんな味だったような気がします。

形は10センチくらいの細長い棒状で、その形からか、自宅近くのパン屋さんでは、LONGUETTESロンゲットLONGUE=長い)という名前で売っていました。

ZEZETTE DE SETEという名前の由来を調べてみたのですが、残念ながら見つけることはできませんでした。セートというのは、ニームから電車で1時間ほどのところにあるフランス南西部の港町の名前なので、その街がこのお菓子の発祥の地らしいのですが、それ以上の詳しいことはわかりませんでした。また、詳細がわかりましたら、お伝えしますね。

 

同じようなお菓子で、NAVETTESナヴェットというものがあり、こちらの方がよりポピューラーで、パン屋さんのほか、スーパーでも袋入りのものが売られています。

NAVETTES “小船“の意味があり、楕円型の生地の中心に切り込みが入ってへこんでおり、確かに小船のような形をしています。スーパーで売られている袋入りのものは、二口くらいの小さなサイズですが、パン屋さんではたいてい少し大きめで、手のひらくらいの大きさのものもあって、私は娘と分けっこして食べてちょうどいいくらいです。

レモン味や、アニス風味のもの、南仏でよく使われるオレンジの花の水を使ったものなど、味のバリエーションがいくつかありますが、生地そのものはゼゼット・ド・セートと同じような、甘さもバターの風味も控えめな素朴な味です。

 

 

 

細長い形が特徴のゼゼット・ド・セート

ナヴェットは小船の形が

かわいらしいお菓子

 

 

これらのお菓子は、甘いお菓子やバターたっぷりのお菓子に慣れていると、最初は物足りない気がするのですが、食べ続けるほどに素朴な味が懐かしく、飽きのこない味わいです。

南フランスの乾いた大地には、バターやクリームたっぷりのお菓子より、こんな素朴なお菓子が合うのかもしれません。

確かに、この辺りの伝統料理ではオリーブオイルを使うことが多いですし、バターやクリームたっぷりのものはほとんどありません。

また、牛でなく山羊の放牧がほとんどだったそうで、この辺の名産のチーズと言えば山羊乳のものですし、バターを使うことが少なかったのでしょうね。今ではバターもクリームも豊富に手に入るのですから、それらを使ったお菓子も作ればいいのに・・・と思うのですが、高級菓子店はともかく、普通のパン屋さんでは、こんな素朴なお菓子しか作られていません。

このゼゼットやナヴェットは、シャンパンや甘口のワインに浸して食べると、乾いた生地が液体を吸って、また違ったおいしさがあります。日本で今、このようなお菓子を見つけるのは難しいかもしれませんが、バター控えめの素朴な味のクッキーを見つけたら、一度お試しください。お酒が苦手な方は、カフェオレやミルクティーに浸してもいいかもしれません(フランス人は、クッキーやクロワッサンなどをこうして食べるのが大好きです)

 

CROISSANT AUX PIGNONS 松の実のクロワッサン というお菓子も南フランス独特のお菓子です。これはアーモンドの粉末と砂糖が主体の生地に松の実を混ぜ、クロワッサンのような三日月形に成形して焼いたお菓子です。アーモンドと砂糖がたっぷりなせいか、見た目に反して、しっとりとした食感です。生地にオレンジピールを刻んで加えているお店もあり、アーモンドのねっとりした食感とオレンジの香りがとても南仏らしい味で、やみつきになってしまいます。

 

最後にもうひとつ、素朴な揚げ菓子をご紹介します。OREIETTESオレイエットというお菓子で、以前ご紹介したリヨンの揚げ菓子、BUGNEビューニュに似た、薄くのばした生地を10センチ四方ぐらいに切って揚げ、粉砂糖をまぶしたお菓子です。

OREIETTESには “耳あて“の意味があり、昔、ニームよりもっと西の、カルカッソンヌという街で見たオレイエットは大きな楕円型で、確かに ”耳あて”のようでした。

リヨンのビューニュはカーニバルのお菓子ですが、ニームではオレイエットは1年中、売られています。薄くて軽いので、ついつい食べ過ぎてしまうのですが、揚げ菓子だからカロリーも相当かも・・・何事もほどほどに・・・ですね。

このオレイエットにも、オレンジの花の水で香りをつけることが多いようです。

オレンジの花の水は、南フランスではよく、お菓子の香り付けに使われ、ここで紹介したナヴェットやオレイエットのほか、ブリオッシュなどの菓子パン類にも使われます。その香りだけをかぐと、お菓子に使うには強烈な感じですが、南フランスの強い日差しと乾いた空気には、こんな香りがぴったりで、欠かせないものとなっているようです。

 

 

松の実のクロワッサン

見た目はクッキーのようですが、しっとり

ねっとりした食感です。

これはオレンジピール入りのもの。

オレイエット

本来はカーニバル時期に

作られていたようですが、

ニームでは年中売られています。

 

 

 

今回はニームで見つけた、南フランスらしい素朴なお菓子のご紹介でした。

ニームは行政区分では、ラングドック・ルシヨン地方に入りますが、プロヴァンス地方にも隣接しているので、両方の地方のお菓子が見られるのが特徴です。例えば、今回ご紹介した、ゼゼットとオレイエットはラングドック地方のお菓子、ナヴェットや松の実のクロワッサンはプロヴァンス地方のお菓子です。ひとつの街で、両方の地方のお菓子が味わえて、ちょっと得した気持ちになります。

まだ他にも、パリでは見ないお菓子がありそうなので、次回も続けてニームで見つけたお菓子をご紹介したいと思っています。どうぞお楽しみに。

 

 

 

 

 

<バックナンバー>

第1回 ガレット・デ・ロワ

第2回 ビューニュ

第3回 マトファン

第4回 タルト・ア・ラ・クレーム

第5回 いちごのデザート