小森発:フランス・おやつ探訪

 

前回に引き続き、また主人の田舎のおやつをご紹介します。

 

 

4回 タルト・ア・ラ・クレーム Tarte à la crème

 

タルト・ア・ラ・クレームTarte à la crème、クリームのタルト)と主人は言っていますが、フランスのブレス地方のお菓子なので、本ではよくタルト・ブレッサンヌ(ブレス地方のタルト)と紹介されています。

このタルトは、パン生地を使ったもので、円くピザのような形にのばしたパン生地に、クリームがしかれているといえば、だいたい想像がつくでしょうか? 大きさはいろいろで、「5人くらいで食べるんだけど・・・」と言えば、お店の人が「それならこれくらい」と選んでくれます。大きなものは直径40センチぐらいもあり、家族や親戚が集まるときには皆、大きなものを買い求めます。

 

このクリームタルトに、さらにこの地方の名物の赤いプラリネを砕いてふりかけたものも作られています。プラリネというのは、アーモンドなどのナッツ類に砂糖がけをしたもののことですが、主人の田舎のあるリヨン周辺ではこれに赤い色をつけた、プラリネ・ローズが名物で、そのまま食べる他に、このクリームタルトやブリオッシュ生地に混ぜたり、パイ生地に振りかけたりと、お菓子にもよく使われます。

しかし、主人が子供の頃は今ほどお菓子には使われておらず、赤いプラリネ入りのクリームタルトはわりと新しいもののようです。きっと昔は、プラリネも貴重なものだったのでしょうね。でも主人は、この赤いプラリネもこのあたりでしか食べられないからと、赤いプラリネ入りの方を好んで食べます。私はといえば、どうもこの赤い色が人工的な感じがして苦手で、普通のクリームタルト派です。

 

 

お店に並ぶクリームタルト。

赤いのがプラリネ・ローズ入りです。

 

 

どちらにしても、主人も私も、このタルトが大好きで、でもパリ周辺では見られないお菓子なので、夏休みやクリスマスに主人の田舎に行った時には、現地ではもちろん、こちらに戻るときにも大きなのを一台、買って帰ります。

パン生地とクリームの味わいが、私にも懐かしく思われるのが不思議だったのですが、あるとき、おみやげに知人に持っていったら、彼女が、「昔食べた、食パンにマーガリンをぬって砂糖を振り掛けたおやつみたい。」と言っていて、なるほど、これが懐かしさの原点だったのかと納得しました。

それでは、このブレスのタルトも同じような作り方なのかなぁと調べてみると、やっぱり近いものがありました! さすがにマーガリンではなくバターが使われていましたが、円くのばしたパン生地に、バターと砂糖を振り掛けて焼くと、焼いているうちにバターと砂糖がとけてクリームのようになるようです。パン生地はブリオッシュ生地を使うとありました。

 

そこで、このレシピを元に家で試してみたのですが、パン生地がふわっとしすぎていて、私たちがいつも現地で食べるものとはちょっと違ったものでした。

また、バターと砂糖がうまく混じらず、砂糖が溶けずにがりがりっとした食感で、いつも食べるようなクリーム状ではありません。味はおいしかったのですが、やっぱりいつも食べているものにより近いものを作りたい!

 

そこで、またいろいろと調べてみると、ブレス地方にも近い、北ドーフィヌ地方にも同じようなお菓子で Tarte de rien (空っぽのタルト)というものがあることがわかりました。やはり、のばしたブリオッシュ生地に砂糖とバターをのせて焼くもので、フルーツなどの具が何もないところから、「空っぽ」のタルトと呼ばれているようです。この地方では小麦の脱穀期のときに食べられていたお菓子だそうですが、そこにでているレシピの注意書きに、「このお菓子はブリオッシュ生地の他、普通のパン生地でもよく作られる」とあります。これだ!とピンときました。昔、家庭でパンが焼かれていた頃、食事用のパンを作るついでに、同じ生地でこのようなお菓子を作ったのではないでしょうか。

 

また、中身については、バターと砂糖だけのレシピの他に、クレーム・ドゥーブルという脂肪分の高い生クリームを加えるレシピを日本の本で見つけました。しかし、このクレーム・ドゥーブルなるもの、フランスのスーパーでは見たことがありません。主人に聞いても、「意味はわかるけど、聞いたことも見たこともない」と言います。もしかすると、お菓子屋さんなど専門的な分野で使われるものなのかもしれません。

そこで、このクレーム・ドゥーブルの代わりに、スーパーで普通に手に入る、液体状の生クリームcrème fleuretteを使い、脂肪分の足りない分をバターで補ってみてはどうかと考えました。これなら生クリームの水分で砂糖も溶けやすそうで、クリーム状になってくれそうです。

 

ということで、パン生地の配合と中身のレシピをを変えて再挑戦。クリームがタルトのふちからはみ出してしまい、見た目はもうひとつでしたが、味はお店のものにかなり近づきました。生クリームを使ったことで、砂糖が溶けてミルキーな味わいに。ブリオッシュではない、あっさり味のパン生地のおかげでさらにこのミルキーな感じが引き立つようです。

残念ながら、主人は不在(単身赴任中)で食べることが出来ず、私と娘のおなかへと消えていきましたが、現地で食べるものとはやっぱりちょっと違うので、主人に食べてもらえるのはもっと研究を重ねてからかな?

 

 

レシピ>

(直径20センチのタルト型一台分)

パン生地

小麦粉 200グラム

砂糖 10グラム

塩 3グラム

ドライイースト 3グラム

ぬるま湯 100110グラム(生地の状態を

みて加減してください)

バター 10グラム

 

中身

 

生クリーム 120グラム

砂糖 50グラム

バター 25グラム

 

 

 

 

@ボールにバター以外のパン生地の材料を加えて混ぜる。まとまったら台に取り出して10分くらいこねてから、バターを加えてまたさらに10分くらいこねる。

 

A生地がなめらかになったら、丸めてボールや密閉容器に入れ、乾燥しないようにラップフィルムなどで覆って、暖かいところで1次醗酵させる。

 

B約2倍にふくらんだら、生地を取り出し、タルト型の大きさに円くのばす。タルト型に生地を敷いて、ラップフィルムなどをかぶせて、再び醗酵させる(2次醗酵)。

 

C2次醗酵の間に、中身の用意をする。生クリームと砂糖を鍋に入れて火にかけ、砂糖を溶かす。砂糖が溶けたら火からおろして冷ましておく。オーブンを220度に温めておく。

 

DBの生地がひとまわりくらいふんわりとふくらんだら2次醗酵終了。タルトのふちから中身がこぼれないように、生地を少しおさえてふちを高くし、そこの部分にフォークで空気穴をあける。

 

Eクリームを流し、バターを小さく切って所々に散らす。オーブンに入れて20分くらい、ふちが軽く色づくぐらいまで焼く。

 

 

 

0分くらいこね終わったところ

      

1次醗酵は密閉容器を使うと

生地の乾燥が防げます。

2次醗酵が終わったら、ふちが少し高くなるように周りの生地を抑えて、フォークで底に空気穴をあけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリームを流してバターを散らしたら

オーブンへ。

クリームがはみだした部分がありましたが

クリーミーでおいしそうな焼き上がりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<バックナンバー>

第1回 ガレット・デ・ロワ

第2回 ビューニュ

第3回 マトファン