小森発:フランス・おやつ探訪

 

出産と育児で長い間、記事をお休みしてしまい申し訳ありません。

またこれからもフランスの素朴なおやつをいろいろ紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

第3回 マトファン - Matefaim

 

 

フランスでは寒い日が続いていますが、寒い季節においしいお菓子は素朴な焼き菓子。中でも私が好きなのは、りんごを使ったものです。秋になると、フランスのスーパーやマルシェでは、たくさんの種類のりんごが並びます。そのどれもが、日本のりんごと比べると小さいのですが、生で食べると酸味がきいて、締まった味のものが多く、お菓子などに使って火を通して食べると、また味が濃縮された感じで、とてもおいしいのです。

 

フランスでりんごを使ったお菓子の代表といえば、りんごのタルトでしょうか。どこのパン屋さんでも作っている一番ポピュラーなタルトだと思います。しかし、同じ「りんごのタルト」という名前で売られていても、そのパン屋さんそれぞれに、特徴があるのがおもしろいところ。りんごを生で使っているところもあれば、一度火を通してあったり、炊いてピュレにしたものの上に生のりんごが並んでいたり、アーモンドクリームと一緒に焼きこんであったり・・・。タルトの生地もパイ風のもあれば、甘いビスケット風生地もありで、本当にパン屋さんの数だけ違うりんごのタルトがあると言えるほどです。

先日、たまたま通りかかったパン屋さんに入ったら、Pommier ポミエという名の菓子パンを発見しました。ブリオッシュ風生地を円くのばし、中心にカスタードクリームを広げ、その上にたっぷりのざく切りりんごをのせて焼きこまれていました。りんごは半分火が通ったくらいの感じで、まだシャキシャキとした生の食感も残っており、パン生地やクリームとの相性もよく、タルトとはまた違った新鮮な味わいでした。

いろいろな種類のりんごのタルトを作っているパン屋さんもあり、以前入ったパン屋さんでは、りんごのタルトと書かれたものの他に、ノルマンディー風というのとアルザス風という、異なる名前のりんごのタルトを置いていました。

ノルマンディーはフランスの北西地方で、酪農業がさかんなところ。それゆえ、乳製品がおいしく、有名なカマンベールチーズもこの地方のものです。しかし、気候がブドウ栽培には適さないので、ワインの生産はむずかしく、その代わりにシードルやカルヴァドスといった、りんごから作るお酒が生産されています。

アルザス地方は、フランスの東部で、ドイツとの国境にあることから、料理もドイツの影響を受けているものがたくさんあります。シュークルートという酢漬けのキャベツや様々な種類のソーセージ、ブレッチェルという独特な形の編みパンなどです。

そのお店に置かれていた二つのりんごのタルトは、ノルマンディー風が、パイ生地に薄くりんごのピュレが敷かれ、細く刻まれたりんごがその上にたっぷりと盛られて焼きこまれたもの、アルザス風は、パイ生地に大きめのくし型に切ったりんごを並べて、カスタード風味のソースをかけて焼きこんだものでした。

地方発りんごのタルトとして有名なものには、タルト・タタンがあります。これは、ソローニュ地方のあるホテルで働くタタン姉妹が、りんごのタルトを作るつもりが型にパイ生地を敷くのを忘れて、あわててりんごの入った型の上からパイ生地をかぶせて焼いたのが始まりいと言われています。今ではフランスの秋冬のデザートの定番で、たいてい温かいタルト・タタンに泡立てた生クリームかバニラアイスクリームを添えて供されます。

 

他に、地方色のあるりんごのおやつってあるのかなと、主人に尋ねてみたところ、彼の田舎ではMatefaimマトファンというりんごを使ったお菓子をよく食べていたそうです。これは私も食べたことがないお菓子。調べてみると、このマトファンは、ブレス地方をはじめ、リヨンやフランシュ・コンテ地方で食べられる、りんごの入った厚焼きクレープとのこと。マトファンという名前は、「空腹をおさえる」という意味からきているそうで、食事には早いが小腹がすいた時などに食べられたおやつだったのでしょう。レシピをみると、材料はいつも家庭にあるようなものばかりで、簡単に作れそう。早速挑戦です。

 

小麦粉100gと、卵1個、砂糖50g、牛乳100cc、それに塩ひとつまみを混ぜて生地を作ります。混ぜる順序は特にありませんが、小麦粉と砂糖をあわせてボールに入れ、それに卵と牛乳を混ぜたものを少しずつ加えていくのがだまが出来にくいようです(日本のホットケーキに比べると、結構甘めですので、砂糖の量はお好みで調整してください)。生地はクレープの生地と同じようなかたさで、ホットケーキより少しゆるい感じです。もしかたそうだったら牛乳をたして調整すれば大丈夫。レシピには香り付けにオレンジの花の水が使われていましたが、日本ではバニラエッセンスでいいでしょう。

この生地を2時間ほど室温でねかせますが、暖房のよくきいた部屋や気温の高い日には、冷蔵庫に入れてやすませます。りんごは焼く直前に用意します。皮をむいて芯をとり、薄いいちょう切りにして砂糖を少々まぶしてから生地に加えます。フラインパンを熱して薄くサラダ油をしき、りんごの入った生地をたま杓子一杯分ほど流します。表面にふつふつと穴があいてきたらひっくり返し、両面をしっかり焼いてできあがり。

 

できあがりは、なぜか私の祖母が昔作ってくれたホットケーキにそっくりで(祖母のホットケーキは全然ふっくらしていなくて、厚焼きクレープのようなものでした)、食べてみると、味もそっくり。主人はもちろん、私も懐かしく味わいました。

材料も作り方も単純で、オーブンも使わないので家庭のおやつにぴったりです。ぜひお試しください。

 

 

 

 

1.クレープの生地くらいのかたさにして、室温で寝かせます。

2.焼く直前にりんごを準備して加えます。

3.懐かしいおばあちゃんのホットケーキのよう!

 

 

<レシピ>

小麦粉: 100グラム

卵: 1

砂糖: 50グラム(好みで調整)

牛乳: 100cc

塩: ひとつまみ

オレンジの花の水またはバニラエッセンス: 少々

りんご: 1個(大きいものなら半分ぐらい)

りんごにまぶす砂糖: 適量

サラダ油: 適量

 

 

 

 

 

<バックナンバー>

第1回 ガレット・デ・ロワ

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