小森発:フランス・おやつ探訪

 

こんにちは、高橋育代のアシスタントを務めます、小森直美です。

今回紹介するお菓子は、素朴な揚げ菓子、ビューニュです。

 

第2回 ビューニュ Bugne

 

このお菓子は、復活祭前の節食・肉立ちの期間の直前の祝祭、カーニバルのときに食べられるお菓子。フランスでは、とくに節食前日となる火曜日のことをマルディ・グラMardi Grasといい、大いに飲んで食べ、そして踊って楽しんだそうです。

そのときに食べられるお菓子が、ビューニュなのですが、これはリヨン地方のお菓子で、中世の頃から作られてきたとか。ビューニュという名前もこの地方独特の呼び名で、例えば、フランスでも南のカルカッソンヌの方に行くと、同じような揚げ菓子が、オレイエットという名前で呼ばれています。オレイエットとはフランス語で「耳」や「耳当て」を意味する言葉で、確かに耳のような楕円型(でも、大きさは子供の顔くらいもあるのですが)をしています。これに対して、ビューニュは普通四角い形です。生地にも多少違いがあるようで、私がカルカッソンヌで食べたオレイエットはパイ生地に似た食感でしたが、リヨンで食べたビューニュは生地がもっと薄くカリカリしていました。

他にも、メルベイユとかベニエとか、地方によって同じような揚げ菓子が別の名前で呼ばれていますし、ブルターニュの方ではこういった揚げ菓子ではなくクレープを食べるのが伝統のようです。

私の主人はリヨンにも近い小さな村の出身なのですが、やはり子供の頃の思い出のお菓子といえば、このビューニュだそうです。それで、彼の子供の頃の味に迫るべく、ビューニュ作りにはまったことがあったのですが、いつも彼の子供の頃の味とは違うようで、そのうち熱も冷めてしまい、しばらくビューニュを作っていませんでした。

 

しかし、このたびカーニバルを前に再び彼のおばあちゃんの味に迫ってみようと、ビューニュのレシピを研究。そこでまず見つけたのが、イースト菌の入る醗酵生地を使ったものでした。これまで私が挑戦したレシピには醗酵生地のものはなかったので、興味津々。レシピの最後には、「小麦粉に水、ローズ水、そしてビール酵母を使ったものが伝統で、そのうちにバターや卵の入るリッチな生地に変化していった」とあります。ということは昔ながらのおばあちゃんのレシピはこの醗酵生地なのかもしれない・・・と、さっそくこのレシピに挑戦!

イースト菌が入るので、全ての材料を混ぜたあと、室温で一晩発酵させます。ひとまわりふくらんだ生地を麺棒で薄く伸ばして(レシピには「向うが透けるくらい薄く伸ばすように」とのこと)適当な大きさの四角い形に切り分け、植物油で揚げます。食べるときに粉砂糖を振りかけて出来上がり。なんだかぼこぼことしたいびつな感じになってしまい、ちょっと期待はずれ。お味の方は・・・生地はかりっとしていますが、それ自体は味気なく粉砂糖がないと食べにくい感じです。主人にも味わってもらいましたが、残念ながら、今まで挑戦したレシピの中で、最もおばあちゃんの味に遠いものだったよう。思い出の味に迫るのはなかなか難しいものです。

 

そんなおり、ビューニュの本場、リヨンを訪ねる機会がありました。しかもちょうどマルディ・グラの時季で、お菓子屋さん、パン屋さんには山積みのビューニュがみられます。

数々のお菓子屋さん、パン屋さんのウィンドーをのぞいていると、いくつかのお店には2種類のビューニュが並んでいることに気付きました。

ひとつは四角くて薄い生地のもの、もうひとつはひねりのある形でふっくらと厚みがあります(上の右の写真参照)。お店の中には、前者をビューニュ・クロッカン(カリカリとしたビューニュ)、後者をビューニュ・モエルー(やわらかいビューニュ)と表記しているところもありました。食べてみると、クロッカンのほうはカリカリ、サクサクしていて乾いた食感、モエルーの方は揚げパンのようなやわらかい食感です。

私はどうしてこの2種類のビューニュがあるのかがとても気になり、あるお菓子屋さんのご主人に尋ねてみると、昔から家庭で作られてきたビューニュというのは、ひねりのあるふっくらとしたやわらかいタイプだったとのこと。乾いたタイプのものは成形も簡単で(ひねりがないので)日持ちがするので大量生産向きということで、後に急速に広まっていったそうです。

 

 

リヨンのお菓子屋さんのウィンドーに並ぶ、

カリカリタイプのビューニュ

こちらはひねりのある形で

やわらかいタイプ

 

 

主人にもこの2種類を食べ比べてもらったところ、やわらかいビューニュの方がおばあちゃんの味に近いが、食感が少し違うと言います。ここで彼に再確認すると、「おばあちゃんの味は、柑橘系の香りがした生地で、ひねりのある形だったが、パン生地のような食感ではなかった」とのこと。

彼のおばあさまは料理上手で豚を1頭さばいて様々な保存食をこしらえるほどの人だったようですが、パンだけはいつもお店で買っていたとのことなので、ビューニュ作りにもイースト菌は使っていなかったと思われます。しかし、食感はやわらかいビューニュだったとのことで、私なりに考えて、イーストの代わりにベーキングパウダーを使った生地でやってみることに。

 

生地の材料を順に混ぜたら、1時間ほど冷蔵庫で寝かせます。寝かせることで生地が扱いやすくなります。

生地をのばしやすいようにいくつかに切り分けてから、打ち粉をした台の上で麺棒を使ってのばしていきます。私は特別薄くはのばさずに、成形しやすい厚みにしました。

これを幅広のひも状に切り分け、さらに10センチくらいの長さに切ります。この長方形の生地の真ん中にたてに切り目を入れて片方の端の生地をくるっと切り目に通すとひねりが出来ます。

こうして成形したものを植物油でこんがりといい色になるまで上げます。出来上がったものは余分な油をきったら、熱いうちに粉砂糖をまぶします。

 

このビューニュは発酵生地ほどふわふわではなく、ふくらみはありますが割合しっかりした食感に仕上がりました。主人に食べてもらうと、これはかなり気に入ったようで、おばあちゃんの味にも随分近づいたとのこと。でも、まだ満点ではないようで、本当に思い出の味を再現するのは簡単ではありませんね。

 

 

 

 

1.生地をのばして幅広のひも状に切り分けます。

2.日本の手綱こんにゃくと同じ要領でくるっとひとひねり。

 

 

3.植物油で揚げていきます。

4.熱いうちに粉砂糖をまぶして出来上がり!

 

 

 

<レシピ>

小麦粉 250グラム

ベーキングパウダー 小さじ1

砂糖 50グラム

溶かしたバター 50グラム

卵 小2個

レモンかオレンジの皮のすりおろし 1個分

 

 

 

 

<バックナンバー>

第1回 ガレット・デ・ロワ