◆ くみさんの フレンチ閑観 

人が察したフランスを綴りました。たまにはゆっくり周りを見て……。

 

 

<再掲> クロード王妃のおはなし

 

 

(*これは前に載せた話ですが、果物の季節ですし、いい話ですし、再掲することにします)

 

むかしむかし、フランスにクロードという王妃様がおりました。

王様であるだんな様は、フランソワ一世といいます。

この王様は、美しいものが大好きで、美術・芸術を擁護しました。とりわけ、イタリアの画家であるレオナルド・ダ・ヴィンチを援護したことは有名です。

美しいものをこよなく愛するこの王様は、お妃様をちっとも大事にしませんでした。

なぜなら、このお妃様、たいへんな器量悪しだったのです。お顔も整わないうえ、びっこを引いて歩く、どんなドレスを着せても似合わない、エレガンスのないかわいそうな王妃様だったのです。

 

王様が知っていらしたかどうか分かりませんが、しかしこのお妃様、それはそれは心の美しい人でした。自分の醜さを嘆くことはあっても、けしてそれを他人にぶつけることはありませんでした。

それどころか、いつでも他人の幸せを願ってやまない、やさしい心の持ち主でした。

国の民衆たち、宮廷の貴族たち、お仕えする者たちは、みな口をそろえて「善良なる王妃様」と呼んだのでした。誰からも親しまれ、慕われ、愛されるお方でした。ただ一人、だんな様の愛情だけが、彼女に欠けているものでした。

 

だんな様には、たくさんの側室の婦人達がおりました。この王様はそのお妾さんたちのお世話で精一杯で、とても自分の正妻のほうをふりむく余裕などありませんでした。

王妃様はそのことでとても悲しんでおられました。

みんなに愛される善良なる王妃様が悲しみに沈んでいる姿は、見ているだけで辛いものです。

 

王妃様はお庭を散歩して気分を紛らわせておりました。彼女は緑の自然が大好きでした。美しい花も、醜い花も、みんな好きでした。

お城の庭師は、大好きな王妃様のためにいろいろな花を咲かせ、木を植えることに生きがいを感じておりました。

 

その庭師のもとに、あるとき、遠い国から一本の珍しい木が届けられました。

白い小さな花が咲き、緑色の実のなる木です。庭師は、王妃様のために一生懸命この木を育て、研究し、改良し、それはそれは美味しい実のなる植物を作り出したのでした。

緑色の実は、お世辞にも美しいとは言いがたいのですが、その味には、どんなに赤い色をした果物にも負けない魅力がありました。それはとてもやさしく、とても甘いのです。

 

庭師は、その木に、「クロード王妃」という名前をつけて、王妃様にささげました。

 

王妃様は、庭師に厚い感謝の気持ちを述べました。そしてその実を召し上がってみますと、心の中からじんわりと、幸せな快いものが湧き上がってくるのを感じました。そのときの王妃様のお顔は、とてもまばゆい輝きに包まれておりました。

 

「クロード王妃」は、今なおフランスでもっとも美味しい果物のうちのひとつです。

王様の数多い側室の美しい姫君たちの名前は忘れられましたが、この善良な心やさしい王妃様のお名前は、こうしてずっと後世まで残ることとなったのでした。

「クロード王妃」はあれから五世紀を経た後も、国中の人々に愛され続けているのです。

 

めでたし、めでたし。

 

 

* * * * *

 

 

レーヌ・クロード(クロード王妃)は、スモモの一種です。直径3〜4センチの食べやすいフルーツ。

16世紀にフランスで作られた品種です。フランソワ一世が王様になったのが1515年、クロード王妃は1524年に亡くなっているので(24歳!)、その間ということになりますか。

 

いろいろなスモモが、8月から9月ごろに八百屋の店先を彩ります。赤スモモ、黄スモモ、緑スモモとありますが、見た目に一番すっぱそうなこの緑色のスモモが、じつは一番甘いのです。

赤や黄色はすごくきれいで美味しそうなのに、あれは皮がすっぱいのです、とっても。その酸味が好きという人も多いでしょうけど。

 

やっぱり、甘さではこの緑のレーヌ・クロードです。ジャムにしても美味しいです。

見かけではないのです、中の味です! フルーツも、人間も!

 

……なんて、そんなこと言っているようじゃあ、やっぱりおとぎ話の読みすぎでしょうか……。

 

reineclaude

レーヌ・クロード

 

20089 ・再掲20199月)

par Kumisan

 

 

 

 

 

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コルシカ・ジョーク

 

par Kumisan

 

 

 

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